PrismPlaneメンバーインタビュー Vol.4木工作家小寺利典 1976年12月、京都府南丹市生まれ。既婚。祖父の代から林業を営み、父が製材業を始める。自身は建築系の専門学校を卒業した後、大阪の材木店に勤務するなどし、現在は家業である「コテラ木材」にて代表補佐を勤める。3代続く「木」を活かす生業──── 現在はどのような事業を行っていますか。コテラ木材としては製材業を営んでおり、鳥居や社寺関係、神輿の資材などをメインに取り扱っています。その他、建築系のリフォームやワークショップなども一部行うなど、何かしら「木」につながることを生業としています。 鳥居や社寺関係の仕事は、商社や専門店、神具屋さんや仏具屋さんとの個人的なつながりから受注しており、飲み友達だったりします(笑) ──── 最初から家業を継ぐ気でいた。 なんとなくはおそらく根底で思っていたとは思います。ただ、若い頃は自分の可能性を求めて別のことをやってはいました。しかし、結局何かを作るのが好きだったんでしょうね。最終的には戻ってくることになりました。そのきっかけとしては、母が亡くなり、「今がこういうタイミングなんやろうなぁ」って腹を括りました。父の長年連れ添った人がいなくなった空白を少し埋められればという気持ちもありました。コテラ木材で制作した飲食店カウンター ──── 現在、レンタルスペースもはじめようと考えている。モノづくりができて学べるレンタルスペースを作ろうと考えています。発想の元としてはそういう場所がないということです。 そしてそういった場所を作りたい理由の一つが、幼稚園や小学校の教育の中で、小刀や彫刻刀を扱う機会が減っている、もしくはとても安全な状況で使用する形になっているということです。それは時代のなかで仕方のないことだと思うのですが、個人的には違うなと思っている部分もあります。怪我をしない方が良いというのは大前提なのですが、怪我をして痛い思いをした場合、限度を知ることにつながります。使い慣れないと限度がわからず、大怪我につながることもあるかもしれません。 そしてもう一つの理由は、現在、木調のモノが市場に多くありますが、「本当の木」を知らない人が増えてきている気がします。そういった方々に触れてもらいたいという気持ちがあります。 我々のような製材業には使いきれない端材が多くあり、それを有効活用できるという観点でも良いものになります。そこで利益を追求しなくても結果的に返ってくるだろうなと思っています。やろうと思えば小屋でも作れますよ(笑) 材料があっても何が作れるのかわからない人に使ってもらえるようなレンタルスペースにしていきたいですね。木で作ったコーヒードリップスタンド 小さいことの積み重ねを続けていく──── 以前、ラジオで川上と川下の話をされていました。私も含めて山側に住む川上の人間って川に何か流すこと、生活環境の中で排出しているものをあまり意識していない傾向があると思っています。それは川下に行けば行くほど、その影響が出てきます。さらに海に出た場合、それは顕著に現れていて、海岸沿いに大量のプラスチックが漂流しているなどの状況になっています。そして海に流れてきたプラスチックなどが海流に乗って、他国に流れ着いたりもしています。そうしたなかで「海を綺麗にしましょう」という活動が行われていますが、それは元をたどると、川上の方からどんどん流れてきた結果でもあるので、もっと川上側の人間も考えていくべきだと考えています。 そのことを踏まえつつ言い換えると、山から海まで水は流れ、また山に雨が降ってまた川に流れ込んで海までいくように、自然は循環するものなので、住む地域、環境に限らず誰しもが川上にも川下にもなります。結局は「誰が川上」で「誰が川下」という話ではなく、みんなで考えていきましょうということです。 できることって個人レベルの意識の問題なので、それほど大きな話ではないのですが、小さなことの積み重ねが重要だと思っています。──── クリエイターを目指す人、クリエイターとして成長したい人に一言。これはクリエイターに関わらずだと思いますが、自分を信じるしかないんじゃないかと思います。周りに何を言われようと、最終的には続けている人間が強いと思うので、諦めずにずっとやり続けることだと思います。■関連リンクドリップスタンドを購入できるBASE https://gl2020.shopselect.net/ SUZURI https://suzuri.jp/komok2009(聞き手:CL編集部) 前回:【赤堀 堂馬】「好き」を突き詰め、文章を書くことを仕事に 次回: