どうも、僕こと氷室柾貴です。普段は正社員をしながら、神崎将臣先生公認で「重機甲兵ゼノン」の完全フルリメイク漫画「XENON REBOOT」を執筆しています。前フリここ数年はネットの発達ということもあって、色んな人がいろんな手段で発信をできるようになりました。僕は漫画描きなので特に漫画家の先生の発言などを見てしまうわけですが、最近はなんか手の内を開陳、というかテクニックだの小技だの情報が溢れすぎてる気がしないでもないわけで。というか、100万部単位のヒットを飛ばしている漫画家の先生はそういう発言しなくて、Twitterでいつもバズるのに「この人の代表作って何だっけ?」というタイプの漫画家の先生がよく発言してますよね。ということに反発したというかどうかはさておき、僕なりに漫画について思うところが色々あったのでTwitterでぶちまけたところ、それなりに反響があったのでここでまとめて加筆修正し、引用RTで行った補足説明も入れていきます。元のTwitterでも書きましたが、それなりに辛辣なことも書いているので、読んでいる人にとっては耳の痛い発言もあるかもしれません。ただ、僕が言っていることは必ずしも正解ではないので、話半分に読んでいただければ幸いです。1)漫画は難しくない漫画を描くことについて難しく考えている人がいますが、そんなことないです。漫画は決して難しいものではないです。極端な話、1枚絵のイラストにフキダシとセリフと効果音を付けるだけで漫画になっちゃいます。ゴリゴリの長編ストーリー漫画を描いてる僕が言うのも何ですが。ちなみに僕が1枚絵のイラスト描くときは、1枚絵の漫画だと思って描いています。イラストだと思うと変に構えてしまうので。補足僕も漫画について一時期難しく考えてたことあったけど、プロの人ほど「所詮は漫画でしょ?」って言ってくれるので、ものすごく気が楽になった。あと、「趣味を義務にしてはいけない」ってのは、僕の師匠から時々言われる言葉です。2)漫画の経験値スタイル漫画は1本完成させないと経験値が得られません。「ここが気に入らない」とか「ここがうまく描けないから」などと理由を付けて途中で放置していては、絶対に漫画は描けません。漫画を描けるようになるには、まず1本完成させることです。でないと次のステージに進めません。補足何なのこのウィザードリィスタイル。けどほんとに完成させないと、わからないことがたくさんあるんですよね。例えば、ネームのスピードや描き込み具合、下書きのやり方、効率的な作画方法などなど。こればかりは1度通しでやってみないと、次に活かせないんですよね。3)手持ちの武器で勝負しろ漫画を描きたくても描けない人にありがちなのが、「わざわざ難しいものを描く」事です。今はソフトも素材も充実してますので、便利なものの力を借りつつ、今の自分の力で描けるものをとにかく1本形にした方がいいです。達人になるまでずっと勉強ばっかりするんですか?実際に僕もネームと完成原稿で全然違う絵が入っていたりしますし。とにかく今のレベルで描ける最高の絵を描くことを心がけています。補足その難しい構図、ほんとにその漫画の演出上必須ですか? ってだけの話。演出に必要ないのに難しい構図が描きたいからって理由で描くなら意味ないですよね。もちろん演出上必要なら描かなければなりませんが。4)ネタのストックは大事これもありがちなのですが、「一つのネタに拘りすぎ」って人も多いです。同じネタをこねくり回し続けた挙句、結局何の形にもなってないって人、多すぎです。それならふと思いついた何気ないネタをストックしておいて、寝かせておいた方がマシです。(ビンテージワインかよ)補足ほんとにどんなに些細なことであっても思いついたことをストックしておくと、別のネタに組み合わせたりとかリメイクしたりとかできるんですよね。実は僕の過去作ももともとは全然違う話で、時代背景も別物でした。5)ネームは捨てるもの漫画を描く時にネーム、描きますよね?僕もネーム描きますが、気に入らなければ捨てますし、しばらく置いて見返した時につまらなく感じたら捨てて書き直します。捨てるのがもったいない?いや、捨ててなんぼでしょ?捨てられないなら、自分の中で話やキャラに対する咀嚼が足りないだけ。補足捨てなくてもいいけど、いつまでもネームの描き直しばっかりやってる人って何なんでしょうか? 作品完成させる気あるのでしょうか? いつもネームの進捗ばかり見せられても、肝心の完成品はどこ? ってなってしまいます。6)耳年増になってないか最近は漫画家の先生がいろいろな方法論や技術論などをTwitterで垂れ流してくれるのでそれをいちいち真に受けてる人がいますが、それ本当に全部信じていいのですか? 生存バイアスかもしれませんよ? もしかしたらその先生にしか使えない方法かもしれませんよ?全てを盲信するよりも、自分で考えて取捨選択して行った方がいいと思いますよ?(これも一種のバイアス)補足どれが自分にあった方法かわからないから、とりあえず試してみるってのはいいけど、試さずに知識ばっかりストックしても意味がないです。インプットした分、アウトプットしないと意味がないですし、インプットばかりだとやがてオーバーフローしてしまいます。7)画力? 貴方は何を描きたいんですか?よく「漫画を描くのに画力が足りない」ってぼやいている人を見かけますが、あなたが求める画力って何ですか? 何を描きたいのですか? 漫画? イラスト? それともアート?僕は漫画にとって必要な画力が欲しいので、いろいろとやってる練習法や、効率化、3Dデータ作成、プラモデル作成、資料のストックはすべて漫画のためです。補足もうね、ほんとに僕の中のガッツが荒ぶるんだ。「てめえ、達人になってから漫画描くのかよ?」って。そんなんなら、何でもいいからとにかく描いた方がいいですよ。むしろ、描かないと達人になれませんよ。8)続・画力?僕はよく「何でも描けるようになろうと思ってないか」って言われて、実際その気質があるのですが、最近は素材や3Dソフトに頼ることを覚えました。ただし、素材そのまんまってのは格好が悪いので、素材感を消すために色々と工夫はしています。それと、漫画にとってはやはりキャラが重要なので、漫画として「映える」キャラデッサンやアタリの取り方などを学び直しています。補足漫画で求められる画力と、イラストで求められる画力は違うんですよね。だからイラストレーターの人が漫画描くときは、たいていネーム構成担当の人が付いてるんですよ。9)万人受けする漫画なんてないもしそんなものがあったら、それはとても普通の、ある意味つまらない漫画だと思います。僕はそれよりも、まずは僕が読みたいから漫画を描いているだけで、結果として僕の「スキ」を受け入れてくれる、僕の性癖が刺さる、つまり僕の漫画を読んでくれる人がいるのです。補足とりあえず誰か一人にでもいいから心を刺せ! 大家と呼ばれる漫画家の先生だって万人受けする漫画は描いてない! 何が誰の心に刺さるかわからないから、とにかく描くのです!10)ツールに振り回されてないか?最近は漫画を描くためのソフトが充実してきて、いろいろな機能が搭載されてますが、その機能を使いたいがためだけに、漫画を描くのは本末転倒です。先程の演出の話でも書きましたが、ツールを使いたいがために不必要な演出を入れたりしてませんか?読者は技術を見たくて読んでるわけではないのです。読者は「漫画」を見たいんです。ここ、わかる人いるでしょうか?補足僕もツールの力は色々借りるけど、それは全て自分の漫画を表現したいからです!ツールなんかこき使え!喰らって自分のものにしてしまえ!11)さいごに描け! とにかく描け! 一次創作だろうが二次創作だろうが何でもいいから描け!描かないと、作品は出来上がらないですからね。補足ほんとマジで描け! とにかく描いて1本完成させろ! 話はそれからだ!僕、最終的にはこれしか言いません。フォロワーさんから頂いたリプで「物語を終わらせることができるのは、それを描き始めた人だけ」というのがありましたが、まさにその通りだと思います。ホントのホントの最後に漫画描きとして一番やっちゃいけないこと。特にTwitterとかpixivなど無料で漫画を発表してる人がやっちゃいけないこと。発表したあとの作品を、「〇〇がかわいそうだから幸せにしてあげて」等の読者の感想を受けて修正してしまうこと。感情で安易に作品を修正してしまうこと。論理的な指摘、データ等があって間違いがある場合に修正するのは正しい情報を伝えるために必要なことですが、1読者の感情的な感想で作品を修正してしまうのは「作家さんが優しいから」ではなくて、「安易に修正できるほど作品に思い入れも何もないから」気軽に修正できちゃうんですよね。しかもその一連のやり取りで気軽にバズも狙えちゃいますし。というわけで、僕が日頃漫画について考えていることでした。