どうも、僕こと氷室柾貴です。普段は正社員をしながら、神崎将臣先生公認で「重機甲兵ゼノン」の完全フルリメイク漫画「XENON REBOOT」を執筆しています。前フリ漫画を1本描き上げるって、やること非常に多いですよね。プロット作成に始まり、キャラクターデザイン、ジャンルによっては舞台設定(ここでいう舞台は背景作画のための設定のこと)、脚本執筆(これは人による)、ネーム制作、下書き、ペン入れ、仕上げ、という風に「やることが……やることが多い……」と某犯人たちの事件簿のキャラクターみたいなことを言わずにはいられないですよね。ちなみに、下書き以降はほぼルーチンワークなので、漫画を描けない人はその前の段階ができてないという事になります。今はデジタルでの漫画制作が主流なので、僕みたいなアマチュアでも、それなりのクオリティの作画をお出しできるわけです。で、ここでは漫画が描けない理由を「時間がない」「気力がない」「働きながらとか無理」などの個人的な事情で片付けることはしません。なぜなら、それを言ってしまったらおしまいと言いますか、全然論理的ではないわけですよね。というわけで、僕は割と詰めることが多くてそれで何人も泣かしたことがありますので、今回は詰めずに論理的に話をしていこうかと思っています。ちなみに僕はゴリゴリのストーリー漫画専門なので、ショート漫画や4コマ漫画には触れません。ここからが本題というわけでここからが本題です。漫画を描けない人はなぜ描けないのでしょうか。プロットできた! キャラクターデザインできた! 舞台設定できた!……あれ? ここからどうしたらいいの?漫画が描けない人は要するにネームが切れないんですよ!ネームが!ではなぜネームが切れないのでしょうか?理由はいろいろとありますが、ここでは主に以下の理由について解説します。ネームを一発で決めなければいけないと思い込んでいるネームは自分以外の人間が見てもわかるように、きれいに描き込まないといけないと思い込んでいる1本のネームにあれもこれも詰め込もうと欲張りすぎているとにかくかっこいいネームを描かなければと考えすぎているこれらは僕も経験したことありますので、気持ちは分かるんです。しかし、ここを乗り越えないと、一生頭の中で設定を考えてるだけで、死ぬときに「あー、漫画1本くらい描きたかったなぁ」なんて思いながら死んでいくんです。……それはそれでその人にとって後悔のない人生なら別に構わないのですが。僕は幸いにも、いいタイミングで上記のブロックを外してもらったり自分で気づけたりしたので、ありがたいことにネームを切ることができて、漫画を描くことができています。僕は正直何よりもネームを切る能力を失うことが一番怖いです。ちなみに僕のネームはこんな感じです。これは提出する必要があるのと、コスチュームデザインを見せるために描いてますが、これでも昔よりはネームの情報量は減っています。「ネームを一発で決めなければいけないと思い込んでいる」ことへの対策プロ漫画家志望の人がよく「ネームがボツになったー! またやり直しだよー!」的なことを言っているのをちょくちょく見かけると思いますが、それを見た反動でアマチュアの人には「ネームを一発で決めなければいけない」と思い込んでいる人が多いかと思います。けど、ネームは基本的に「捨てるもの」なんです!書き直すことによって、ネームの描き方が上達し、内容も練り込まれていくからです。僕も実際にネーム60ページくらい捨てて書き直したことあります。ネームを一発で決められるのはよほどの天才だと思いますので、ネームで気に入らない部分はポイポイ捨てていきましょう!ただし、「ここだけは絶対に変えてはいけないポイント」という部分は確実に存在しますので、そこは変えないでください。「ネームは自分以外の人間が見てもわかるように、きれいに描き込まないといけないと思い込んでいる」ことへの対策これもまた、アマチュアの方に多いのですが、誰が見てもわかるようにネームをきれいに描き込まなければならないと思い込んでいる人が多いです。編集者がいるのならともかく、アマチュアでネームを見るのが自分だけ、なら自分に分かればいいんです。で、これの最大の弊害が、「ネームを下書きなみに描いてしまってその時点で満足してしまって次の作業をやらない」ということになります。また、丁寧に描いたばかりにネームの良くない部分を直すことにも躊躇……むしろ放棄してしまうのです。そして結局作品が出来上がらないのです。ならば漫画を描き上げるために必要なネームは、前述の通り自分だけがわかればいいレベルのネームを描けばいいんです。極端な話、キャラクターなんかマルと目と口だけ描いて、額に名前書いてればいいんです。整えるのは下書きの段階でいいわけですから。「1本のネームにあれもこれも詰め込もうと欲張りすぎている」ことへの対策これもまた、アマチュアの人で長編を描きたいと思ってる人にありがちなパターンなのですが、1本の話にあれもこれも詰め込もうと欲張りすぎているのです。しかも、そういう人に話を聞いてみると、読切を描いたことがない人が多いのです。読切も描いたことないのに、いきなり長編描いちゃうの? と、僕はちょっと心配になるわけです。意外に思われるかもしれませんが、読切漫画って難しいんですよ。キャラや舞台を瞬時に理解させないといけませんし、話の目的もシンプルになるためそれをどう面白く見せて、最終的に読者のカタルシスを満たさないといけないわけですから。そうなると、取捨選択が必要になってくるわけです。僕が単発読切を描く時には主要キャラ3人程度で話を回せるように、場合によっては設定を変更したりします。ですから、長編を書く前に一度パイロット版の読切のネームを切ってみることをお勧めします。これは作品として仕上げてもいいですし、このネームをもとに長編のネームを切ってもいいわけです。……個人的には一度最後まで描き上げることをお勧めしますけど。「とにかくかっこいいネームを描かなければと考えすぎている」ことへの対策漫画を描くからには「とにかくかっこいいものを描かなければいけない」(少女漫画だととにかくかわいいもの、でしょうか?)と思っている人も多いかと思います。そのために自分でもろくに描けないような難しいアングルや構図を多用したり、使ったこともないような技法を使ってみたり……。そして結局、描けないからネームが完成しないのです。これへの対策は簡単です。「自分が今の画力で描けるものを描く」だけです。極端な話、面白い漫画はいわゆる顔だけの会話劇(「顔漫画」と揶揄されるもの)で成立するのですから。画力はあとからどうにでもなります。ですから、ネームもその程度でいいんです。難しいことを考えなくていいんです。ネームで描けないものが本番で描けるわけないのですから。で、結局ネームを完成させるにはどうすりゃいいのさとにかく現在の自分が描ける読切ネームを1本描き上げましょう。気に入らなかったり、おかしいなと思ったりしたら捨てて書き直していいんです。とにかく描き切ることが大事なんです。そのためには、ネタのストックが必要になりますけどね……。割といるんですよ、「この作品しか描きたくない!」って言う人……。そういう人は結局いろいろと冒頭に挙げたような言い訳という名の理由を付けて、「この作品」を形にしてないんですよね。ですから、とにかくネームを描き切ってしまいましょう!ホントにあとはルーチンワークですから……!それではよい漫画描き生活を!余談:ネームに関しては本当はもっとたくさん言いたいことがあるのですが、それ全部言ってしまうと、本が1冊書けるくらいの量になってしまいますので、今回は敢えてテーマを絞りました。